詩の朗読「灘岡湖に沈んだ核爆弾が爆発したその日……僕はただ死んでしまいたくて」竹下力 by 竹下力 published on 2023-02-05T07:06:59Z 終わってしまった事が終わってしまったように悲しくて。 始まりはいつも始まらない怒りや憎悪に満ちている。 僕はただ死んでしまいたいだけ。 すべてが消えていく間に……。 僕には何も始められることは出来ないから僕の命は終わっているから怖くないのに怖かったりもして。 笑った出来事はすでに過去だから消えてしまい、白い混濁した感情がやっちまえと銃殺を叫んで虐殺を求める。 僕は苦しいよ。汚れ切っているから。 午後3時を過ぎて目が覚めると灘岡には珍しく雪が降っていた。 溶岩土の灘岡山脈にも3センチほどの雪が積もっていた。 僕の寝床は炭鉱の奥のトロッコの中だったから吐息が凍る。 孤独じゃないよ。ひとりぼっちなだけだ。 ひとりぼっちだから春を感じられると思うんだ。 だけどどんなに望んでも春は来ないんだよ。 父さんは僕を殴るし、母さんは僕をレイプする。 お願いだから僕に涙を満たして僕を形作って欲しい。 僕には何もない。僕は空っぽなんだ。 すべての白い吐息が消えていく瞬間に目を覚まし。 鳥達の声は寂しげな終わりを告げながら稲妻が何本も落ちてきた。 外に出ると空は真っ赤に燃えていた。 熱波と核の匂いは柘榴のような母さんの性器的な酸味を帯びていた。 爆発した不発弾のキノコ雲が湖の水を舞い上げて僕らに降り注ぐ。 雪と混じり合い黒い雪になった涙は父さんが三好先生とヤっていることを気づかせてくれた。 彼女はファックさせるだけで生き甲斐を覚えているのが悲しいよ。 みんな悲しいんだ。僕を悲しみで満たして僕を殺したっていいのに。 僕はナッシングだとしても君はエブリシングだってことを。 せっかくの純白の雪が黒く赤くなっていく。 そのキノコ雲は湖を沸騰させ僕がいる炭鉱まで広がってくる。 速度はゆっくりなのに僕の体はとても早く溶けていく。 熱を感じる余裕もなくてただ寂しいだけだから。 母さんの柘榴の核の匂いでゲロを吐いちゃいそうだよ。 僕はこのまま溶けてしまえばいい。 僕は空っぽ。何もないんだ。 雪と混じり合って僕の轍は消えていく。 僕なんか無視して走り去って仕舞えばいいのに。 君は僕にとって全てであり続けた時には燃え尽きるだろう。 湖は一瞬で干上がり、空には蜃気楼のように湖が浮かび、灘岡は消滅した。 終わってしまった事が終わってしまったように悲しくて。 始まりはいつも始まらない怒りや憎悪に満ちている。 ひとりぼっちだから春を感じられると思うんだ。 だけどどんなに望んでも春は来ないんだよ。 すべてが消えていく間に……。 Genre Rock