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ペンキ塗りをした日、ふと、東京に住んでいたときのお隣さんを思い出した。隣も賃貸なのに、外壁にもドアも緑色のペンキを塗っていて、びっくりした日のこと。子どもたちと走り回るお父さんの笑い声。
わたしは10年くらい前に一人暮らしをするまでの間、さまざまな仲間と住んだ。シェアをしながら暮らせばお金もかからないし、広い家に住める。べたべたしすぎず、意外とひとりの時間もある。
最後の共同生活をしていたとき、ベランダでタバコを吸いながらお隣さんのペンキのにおいをかいでいた。からだにはよくないかもしれないけれど、いいにおいがした。
隣の家の方は「緑色がすきなんだよ!」とのことで、毎日のようにペンキ塗りをされていた。杭を打ったり花を植えたりと、たのしそうに庭づくりをしているように見えた。
イギリスうまれの夫、関西うまれの妻。二人には二人の子どもがうまれ、隣の家からはいつも笑い声が聞こえてきた。二人目の子どもは、隣の家に咲く植物の名前。愛情深く育てられると、こんなふうに育つのだなと思うようなかわいらしい子たちだった。
わたしたちは夜中にマリンバの録音をしたり歌ったりもしていたので、おそらく迷惑もかけたけれど「うちも歌うし、音楽がすきだからどんどん歌って!」とのことだった。
そんなお隣さんはなにかのタイミングでイギリスに引越してしまい、緑色のドアもいつのまにか茶色に戻っていた。
何年か経った頃、突然はがきが届いた。ペンキ塗りをしていたお父さんが亡くなったとのこと。
手紙には、縁もゆかりもないイギリスだけど、しばらく住んでみますと書いてあった。
わたしはローズマリーをみる度にあの女の子を思い出すし、これからペンキを塗る度にあのお父さんの笑い声を思い出すだろう。
杭を打ったり花を植えたり、たのしそうに庭づくりをしているように見えたけれど、大変だということもわかった。
みんな大きくなったかな、元気に暮らしていますように。
Seems a little quiet over here
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